【感想】「アイムホーム」-記憶を失くした男の帰る「家」

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小学館「ビッグコミックオリジナル」にて1997年7月から1998年12月まで連載された、石坂啓「アイムホーム」を読みました。なお、元々は「I’m home(アイ’ム ホーム)」表記だったのですが、ドラマのタイトルが「アイムホーム」になったことを受けてか、2015年3月30日の文庫版ではタイトルが「アイムホーム」になっています。

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あらすじ

エリート銀行員「家路 久(いえじ ひさし)」は単身赴任先の住宅で一酸化炭素中毒にあい、一命は取り留めたが5年間の記憶を失ってしまう。5年前の離婚を経て現在の妻・息子と暮らす彼は、事故後に彼らの顔が仮面を被っているようにしか見えなくなってしまう。そして人間関係を記録したメモで曖昧な記憶を補いながら、ふとした拍子に戻ってきた家は、別れた元妻と娘の暮らす家だった-。

感想

テレビ朝日で始まるキムタク主演のドラマ「アイムホーム」。ふーん、キムタクがテレ朝のドラマに出るなんてめずらしいね、なんて思いながら内容を見ると、原作は「キスより簡単」の石坂啓。「仮面をかぶった妻子」のビジュアルに、「こんなマンガ、あったあった!」と記憶がよみがえりました。そして当時は断片的にしか読んでいなかったので、これを機に電子版を衝動買いして一気読み。こういう時電子書籍はすぐに買えるから便利ですね。

連載が1997年からということで、若干ではありますがバブル時代のやり手サラリーマンをイメージさせる主人公。再婚した妻子とその両親だけが「仮面」をかぶっているように見える、というのは、有機物(人間)が無機物にしか見えなくなった火の鳥・復活編の主人公「レオナ」をどことなく彷彿とさせます(レオナの場合はチヒロ以外のすべてが無機物に見えるわけですが)。

新しい妻子の記憶はほとんどなく、またその表情も仮面により読み取れないため、どことなくよそよそしさを感じる家路。各話の冒頭で「ただいまー」と帰る家は、別れた妻子、愛人、実家、過去の友人など、過去に彼の人生に関わった人の家ばかり。

元妻の娘・スバルら過去に自身と関わった人々との交流を経て、はっきりしない記憶を少しずつ埋めていき、自分という人間を再構成していく家路。そして元家族や現家族のこと、自分が振り返って来なかった「家」を見つめなおします。しかし「家路 久」という主人公の現在は非常に穏やかで好感が持てるのですが、離婚・再婚の経緯や愛人なんかもいたりしていろんな意味でやり手(笑)。

家って何?家族って何?仮面の意味は?そして彼が最後に帰る「家」はどこなのか?「家族」「家」を題材にした物語ですが、家路が向き合う「過去の自分がだんだん浮き彫りになっていく」過程がほのぼのとするような、ちょっと怖くもあるような。読み手の心の奥底にひっそりと澱が沈んでくる、そんな薄ら寒い思いも感じられる異色のホームドラマです。

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