君たちが難関校に合格できたのは天才だからか?違う。「父親の経済力」、そして「母親の狂気」があったからだ!
中学受験のリアルを謎多き指導者を絡めて描く、高瀬志帆氏の漫画「二月の勝者 ―絶対合格の教室―」1巻のさっくりレビュー。
1分で読めるあらすじ
- かつての苦い経験から、少しでも子どもたちの力になりたいと考える、進学塾の講師見習い・佐倉麻衣。2月に行われる受験で、不合格続きの少年の応援に向かう。
- しかし受験会場に現れた少年はテンパリ気味。泣きながら質問してくるが、麻衣には分からない分野で―
- それを救ったのは、その場にいた大手進学塾の男性講師。彼の的確なアドバイスのお陰で少年は合格。しかし麻衣は敗北感を感じる。
- そして新シーズンに入り、正式に講師となった麻衣。その上司となったのは、大手進学塾を辞めて新校長に就任した黒木蔵人(くろきくろうど)。彼はあの日、麻衣たちにアドバイスをくれたその人だった。
- 子どもたちの将来を大事にしたい麻衣に対し、黒木は言う。受験塾は「子供の将来を売る場所」であり、子どもたちは「金脈」である、と。その真意は果たして…?
「二月の勝者 ―絶対合格の教室―」1巻レビュー
これまでにも数々の「お受験漫画」が描かれてきたが、「中学受験」という、馴染みのない人には全くないそれにスポットをあて、その裏側を描くのが本作「二月の勝者 ―絶対合格の教室―」。
圧倒されるのは、そのリアリティ。「全受験者のうち7割が第一志望に受からない」「都内で中学受験をする児童は約2万5千人」などの具体的なデータや、受験生は言うに及ばずそれを見守る親や講師たちの心情などに、非常に説得力がある。巻末を見るに参考文献として25もの書籍がリストアップされており、なるほど、と言ったところ。
その中でも物語の中心となるのは、主人公・佐倉たちが属する「受験塾」の在り方。生徒たちにわかりやす授業をしたり、将来も見据えたケアもしたり、と色々大事なことがあるが、そこはビジネス。生徒を集めるために「志望校合格」という実績がまず無ければ、話にならない世界。
そこに大手受験塾より格下の塾に、新校長として「謎の赴任」をした黒木。生徒たちには「君たち全員を志望校に合格させるためにやって来た」と豪語し、一方でその生徒たちを「金脈」と表現する彼。非常にドライな人物だが、しかしやること為すことにイチイチ筋が通っていて、とても面白い!
その黒木、色々と「事情」があるようで、また彼ほど割り切れない佐倉と、衝突もしたり。リアリティあふれる「中学受験」の世界と、そこで展開される静かで熱いドラマに、思わずのめり込んでしまう。受験に関係ある人も、そうでない人も、きっと楽しめるであろう漫画だ。
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