講談社より発売。豊田徹也氏の短編集、「珈琲時間」の感想です。
あらすじ
女性チェリストがいきつけの喫茶店で出会ったサングラスのイタリア人。口からでまかせ連発の怪しい外国人と人のよい日本人の愉快なひととき。(「Whatever I want」)
思春期の少女とその叔母。コーヒーの焙煎をしながら語り合う-。(「すぐり」)
他、全17話。
感想
コーヒーを小道具に紡がれる短編集。笑いあり、涙あり、シリアスあり。あ、ちょっとしたSFもあります。コーヒーは時に主役、時に脇役。うんちくなんかもちょこちょこ挟みながら、どの話もゆるやかーに、まるでコーヒーを飲みながら過ごすひとときのように進みます。
コーヒーって、自分はいつから飲み始めたんだっけ。うーん、高校生ぐらいからかなぁ。最初は苦くって、まずくって。でもコーヒーを飲むのは大人になる一歩のような気がして、ミルク入れて砂糖入れて苦味をごまかして。そしてそのうち大人になって、コーヒーの苦味のうまさを知って、気づけばブラックで飲むようになって…。
そんな感じで、人生のいつの時期からかとても身近になる飲み物、コーヒー。時にコーヒーを求め、時にコーヒーを飲みながら語らい、時にコーヒーに癒やしを感じる。そんな登場人物達の様子を見ているうちに、ふと「とびきりうまいコーヒーを入れようかな…」なんて思ってしまう短編集です。なおこのエントリーのタイトルはとある登場人物のセリフから借りました。「さあコーヒーを飲もう、今すぐに!」