作家・田中芳樹氏の同名原作小説を、「鋼の錬金術師」「銀の匙 Silver Spoon」などの人気漫画を手掛けてきた荒川弘氏がコミカライズした、漫画版「アルスラーン戦記」第1巻のレビュー。
大国パルスの王太子・アルスラーンが、戦乱の中で国を奪われ、しかし仲間たちと共にやがて国を取り戻していく、という大河ファンタジーの導入部となる1巻。
武闘派の王である父、美しい王妃である母。その両者からなぜか疎まれているが、優しさ・聡明さから周囲の人間から慕われている、11歳のアルスラーン少年の様子を伝えるプロローグ的な第一章を皮切りに、西の敵対国ルシタニアとの戦で、14歳となった彼が初陣を迎える様子が描かれていく。
まず、プロローグが非常に秀逸な出来。幼き日のアルスラーンと、奴隷少年の脱走劇を軸に、物語の世界観を読者に開示していく、漫画版オリジナルのストーリーがとてもわかりやすく面白い。
そして第二章以降、敵国との緊張感が高まり、14歳のアルスラーンが初陣を迎えるわけだが、高い画力で描かれる合戦が、非常に迫力があって息を呑む。これは流石、荒川弘だなぁ、という感じ。
Amazonのレビューでは荒川弘氏の作画に違和感を抱く原作ファンもいるようだが、原作未読で初めて「アルスラーン戦記」に触れた身としては、漫画家として素晴らしい実績のある作者がコミカライズを担当したのは、大正解だと思う。一コマ一コマに躍動感があり、特に騎馬を用いた戦闘シーンは圧巻。
さて、若き日のアルスラーンがピンチに陥り、さてどうなる!というところで気になる展開が用意されており、続きの気になる「アルスラーン戦記」1巻。巻末に収録の「荒川弘×田中芳樹 超絶ビッグ対談」も貴重な内容で、とても読み応えのある一冊だった。
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